「不動産の法人化Ⅱ」

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不動産の法人化の続きです。
個人で所有している賃貸物件を新設の法人に売買で移転して、所得税と法人税の税率差を利用して節税するスキームが「不動産の法人化」です。
今回はそのメリット、デメリットを解説していきます。 まず、メリットですが、最大のメリットは前出の所得税と法人税の税率差です。所得税が最大で56%(住民税を含む)、法人税が最大で33%(住民税・事業税を含む)ですので、最大で20%前後の開きがあります。もちろん所得が高い方がその効果は高いため、不動産を多く所有している資産家は大きな効果を得ることが可能です。

次に、所得分散の効果です。個人ですと、税金を差し引かれた所得はその個人に帰属することになりますが、法人であれば、役員報酬や株主配当金を使って、複数の役員や株主に所得を分散させることが可能です。もちろん毎年分散させる必要もなく、必要な時期に必要な方が取り分を取っていけば良いので、家族の貯金箱にするイメージだと思って頂くと分かりやすいかもしれません。個人では青色事業専従者給与として家族に所得分散させることが認められていますが、金額の算定根拠や増額する場合の根拠付が難しいため、あまり高額な給与は出せませんし、複数人に出すことも難しいです。一方で法人であれば、「好きな金額を何人にでも」が可能ですので、これは個人ではできない芸当になります。

3つ目は、相続税の増額抑制効果です。富を生み出す不動産が個人から法人に移転するということは、将来的に得られる富(収益)を法人に移転したことになります。ということは、移転以後の収益は個人には帰属していきませんので、個人の相続財産が増額されることはなくなります。これによって将来の相続税の上昇を抑制することができます。ただし、新設法人の株式をオーナー自身が所有している場合は、不動産の収益が法人の株価に反映されて、オーナー自身が保有する株式の評価額が上がってしまいますので、相続財産が増えてしまいます。新設法人の株式は子や孫の下の世代に予め渡しておくことをお勧めします。 大きくまとめると、不動産の法人化で得られるメリットは3つです。

最大のメリットは税率差による節税効果ですが、年間約20%(最大)も税金が安くなり、さらにそれが毎年続くとしたら、相当な効果になりますね。 ただし、デメリットもありますので、それは次回解説することにします。

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