法人保険やオペレーティングリースが法人税の節税になるという触れ込みで、それらを扱う業者さんがこれまでに沢山の商品を売ってきました。
私のクライアントからも「この保険買ってもいいかな?」、「どのくらい節税になるの?」など質問を受ける機会も多かったのですが、その都度私はお答えしています。「お求めの商品は節税にはなりません」と。
法人保険は加入時には支払った保険料が損金に落ちますので、課税所得を圧縮し、確かにその事業年度は法人税が安くなりますが、保険が満期になる、あるいは、任意に解約をするタイミングで保険金が入金され、それは益金に入りますので、その事業年度は課税所得が増え、結果的に法人税が高く算定されます。
長い目で見れば同じことで、ただ今ある課税を先に送っているだけなのです。だから買った法人は損も得もしない。手数料部分(支払った保険料と保険金との差額)を保険会社に儲けさせているだけ。
そういうと、よく保険を解約するタイミングで役員の退職金を出せば良いだの、大型の修繕があるからそれに当てれば良いだの反論をされるのですが、それは財源をきちんと確保するという意味では確かに効果的です。
ただし、それらのイベントがあろうがなかろうが、保険金が降りるタイミングでこれまで繰り延べてきた損金相当額の益金が計上されるという事実は変わりません。むしろ、保険金が降りなければ、退職金や大型の修繕費はその事業年度の課税所得を大きく引き下げたでしょうから、それはそれで節税になっていたはずです。ですから、保険金の使途と節税効果は全く関係がないと認識すべきです。それを混合して煙に巻いてはいけません。
あくまで、資金面で言えば将来のイベントにおける財源確保、税金面で見れば課税の繰り延べ(先送り)でしかないということです。
オペレーティングリースも同じことで、5年後に外部売却する際に多額の売却益が計上されるので、それまでに計上してきた投資損失と相殺されて、結果同じことになります。
5年後の法人税率が今よりも下がっていたら、その税率差部分は得するのかもしれませんが、それは誰にもわからないことですし、逆に税率が上がって損することもあるでしょう。
何が言いたいかと言いますと、業者さんの宣伝文句を鵜呑みにしないで、適切な利用目的で購入すべきだということと、それら節税商品については効果と本質を助言する税理士が経営者には必要だということです。
新聞や雑誌を見ると「節税」という言葉が踊っていて一瞬だけ目を奪われますが、上っ面の表層をなぞるのではなく、しっかりモノの本質を押さえること、とても大事だと思います。