「アメリカ不動産ってなに⁈」

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数年前からアメリカの不動産が投資家の間で人気です。
人気の理由は2つありまして、1つはアメリカの地価がこれまでも緩やかに上昇していることにあります。日本よりも遥かに広大な面積の土地がありますが、値段は下がるどころか毎年上がっているのだそうです。
恐らく移民による人口増加と先進大国としての経済の成長がそうさせているのだと思います。その地価の上昇によるキャピタルゲインを狙って、カリフォルニアやハワイなどの土地が特に(日本人によって)買われています。

2つ目は、建物に係る減価償却が多額に取れることです。本来は、中古建物の減価償却も新築建物同様に耐用年数で毎年費用化されて行きますが、日本の税制では、新築と中古ではその耐用年数の考え方が違います。
中古資産の場合、原則的には残存耐用年数を見積もって、その見積もられた年数で費用化しますが、簡便的な方法として、経過年数をベースに残存耐用年数を計算する方法も認められています。
例えば木造建築物ですと法定耐用年数は22年です。仮に築30年が経過している場合、残存耐用年数は(法定対応年数–経過年数)+経過年数×20%で計算がされます。ただし、経過年数>法定対応年数の場合は、法定対応年数×20%でその計算がされるため、今回の場合であれば4.4年(20年×20%)、端数は切り捨てのため、4年が耐用年数となります。つまり新築建物であれば本来は22年で費用化する必要がある資産を、たった4年で償却ができるということです。
さらにアメリカの不動産事情は、土地よりも建物に資産性を見出す傾向があり、流通している不動産の80%が中古建物となっています。つまり日本とは違い中古資産の売り買いが不動産売買の主力となっている訳です。日本は新築文化なので、不思議な感覚になりますが。

アメリカの場合、1億円で買った建物は、30年経っても価値が下がらず1億円で売ることも可能(極端に言えば)ということです。逆に価値が上がって1億円以上で売買されることもあります。そうすると、同じ取得価額の建物があったとして、この減価償却による費用化の効果は大変大きく、新築建物よりも5倍以上の減価償却費を計上することができる計算になります。
そして、大きく費用化された減価償却費は、日本の不動産から得られる所得やサラリーマンが受け取る給与、年金受給者が受け取る年金との損益通算が可能となり、所得税を圧縮することが出来ます。(源泉徴収で税金を取られている場合は、還付税金を受け取ることが可能になることもあります。)

上記2つの理由があるため、アメリカ不動産は非常に人気の投資商品となっています。現在は2020年の税制改正で、減価償却の効果は制限されてしまったのですが、耐用年数を合理的に見積る方法(「コストセグリケーション」などと呼ばれています)で、対応年数を10年程度に見積もって減価償却をしているケースもある様です。この方法によれば、これまでの4年のインパクトはないものの、22年の法定対応年数より遥かに短く、加速度的に減価償却をする効果は取れている様です。
ただし、あくまで生命保険と同様に課税の繰り延べであることを理解して置かねばなりません。減価償却で早期に費用化できたあとは減価償却が取れなくなりますので、利益が出て課税されます。長期で見れば同じことです。目下の税負担を減少させる効果(将来に送る効果)と考える必要があります。また、投資商品ですから、値下がりのリスクや更なる税制改正リスクは常にそばにあると思わなければなりません。最近、非常に質問が多い論点でしたので、ブログに取り上げてみました。