「今が好機?!事業承継」

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昨日、とある中小企業の自社株式の相続税法上における時価評価を行なったのですが、前回計算した昨年時点の株価と比べて40%も下落していました。

中小企業の自社株式は、上場会社の株式と違って、税法上で規定される独特の計算式によって計算されます。
具体的には、それぞれ「意味合いの違った株価」を2種類算出して、それらの株価を評価する会社の規模(売上高、資産総額、純資産、従業員の数)に応じて一定の配合率で配合して最終的な株価を出すのですが、それぞれ「意味合いの違った株価」というのは
①会社の収益獲得能力を反映させた株価(類似業種比準価額)
②会社の今時点の清算価値を反映させた株価(純資産価額)の2種類です。

いずれも直近の決算書をベースに算出するのですが、それぞれに特徴があります。
①は主に損益計算書に表示される利益や、株主資本等変動計算書に表れる配当、簿価純資産をベースに単年度の業績が色濃く反映されますが、②は主に貸借対照表に表示される資産及び負債をベースにこれまでの業績の累積金額が色濃く反映されます。

単年度で爆発的な利益や配当を叩き出せば①が大きく算定されますが、ものつくりに代表される伝統的な日本企業は、単年度では大きな利益は出せないけれども、薄いながらも利益を出し、業歴が長く築いてきた歴史ある会社が多いため、①よりは②が大きく算定される傾向があります。

ところが最近は、I T企業や金融業に代表される様に、業歴は短いけれども、短期的な利益を多く計上する形態の新しい会社が日本でも増えて来ましたので、必ずしもこれまでのセオリー通りではなくなって来ています。

話を戻しますと、昨日株価を計算したとある中小企業様は、堅実な業績を長い年月をかけて築いてこられた中堅の建設会社でしたが、新型コロナの影響で直近の工事件数が減少し、大きな赤字を計上されていました。
また、①を計算する際に使用する類似する業種(建設業)を営む上場企業(大手ゼネコンなど)の株価も新型コロナの影響で下落しておりましたので、それに引きずられる様に①で算定した株価が対前年比で70%も下落していました。
それが大きく影響して、①と②を配合して算定する最終的な自社株式の評価額が40%も下落したものと考えられます。

事業承継を考える際に「自社株式をいかに安く評価して次世代に譲渡や贈与をするか」が大きなテーマとなりますが、この会社様の様に新型コロナの影響で自社株式の評価が大きく下落している会社が今後多く出てくることが考えられますので、事業承継の好機とも言えます。

新型コロナで業績が軒並み落ちている業種などもありますが、災い転じて福となす、というのは少し言い過ぎかもしれませんが、チャンスを無駄にしない様に注視して行きたいと思います。